義理義理まで頑張って
「この中に一つだけ、毒を入れたわ」 バレンタインの練習をしたと言っていくつもの小さなチョコを作ってきた戦場ヶ原先輩は、それを私に見せるなりそう言い放った。 「どれに入れたか忘れてしまったし、毒は一口でも即死するくらい強力なもので、危ないし全部捨てちゃおうっかなーと思っているものだけど――食べる、神原?」 小さなチョコが並べられた皿を指差しながらそんな事を問うてくる戦場ヶ原先輩の何かを企んでいるようで、何かを楽しむようでもあり、何より私を試してくるようなその笑みに、私は即答した。 「もちろん、食べる!」 「あらそう。じゃあおひとつどうぞ」 戦場ヶ原先輩はチョコの中から無造作に一つ摘まむと、それを私に向かって差し出してきた。 「はい、あーん」 「あ、あーん……」 急なあーんにドギマギしつつ、私は戦場ヶ原先輩の白魚の様と例えれば白魚の方が恐縮しそうなその指から、チョコを口に入れて貰った。 口の中に広がるチョコレートの甘さと独特の風味を堪能するよりも、思わぬあーんをして貰った事にドキドキしていたが、少なくとも毒を食べたわけではなかったようだ。 「……うん! 大丈夫なようだぞ戦場ヶ原先輩!」 「そう、それはよかった。じゃあ次行くわね」 そうして次々と、躊躇いなく私の口に毒入りかもしれないチョコを一つ一つ入れていく戦場ヶ原先輩は、ともすれば悪魔の様であり、魔女の様でもあったかもしれないが、最後の一個を食べたところで私の心臓はバスケの白熱した試合の時の様に激しい鼓動を鳴らしていたので、もしかしたら私は知らぬ間に、もしくはもう知っている、毒をずっと食べていたのかもしれなかった。
お礼チョコ
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本命チョコ
誕生日ケーキ
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「この中に一つだけ、毒を入れたわ」
バレンタインの練習をしたと言っていくつもの小さなチョコを作ってきた戦場ヶ原先輩は、それを私に見せるなりそう言い放った。
「どれに入れたか忘れてしまったし、毒は一口でも即死するくらい強力なもので、危ないし全部捨てちゃおうっかなーと思っているものだけど――食べる、神原?」
小さなチョコが並べられた皿を指差しながらそんな事を問うてくる戦場ヶ原先輩の何かを企んでいるようで、何かを楽しむようでもあり、何より私を試してくるようなその笑みに、私は即答した。
「もちろん、食べる!」
「あらそう。じゃあおひとつどうぞ」
戦場ヶ原先輩はチョコの中から無造作に一つ摘まむと、それを私に向かって差し出してきた。
「はい、あーん」
「あ、あーん……」
急なあーんにドギマギしつつ、私は戦場ヶ原先輩の白魚の様と例えれば白魚の方が恐縮しそうなその指から、チョコを口に入れて貰った。
口の中に広がるチョコレートの甘さと独特の風味を堪能するよりも、思わぬあーんをして貰った事にドキドキしていたが、少なくとも毒を食べたわけではなかったようだ。
「……うん! 大丈夫なようだぞ戦場ヶ原先輩!」
「そう、それはよかった。じゃあ次行くわね」
そうして次々と、躊躇いなく私の口に毒入りかもしれないチョコを一つ一つ入れていく戦場ヶ原先輩は、ともすれば悪魔の様であり、魔女の様でもあったかもしれないが、最後の一個を食べたところで私の心臓はバスケの白熱した試合の時の様に激しい鼓動を鳴らしていたので、もしかしたら私は知らぬ間に、もしくはもう知っている、毒をずっと食べていたのかもしれなかった。